退職金制度がある会社とない会社、どちらを選ぶべき?
2026.02.04掲載
  • Twitter
  • Facebook
  • Line
お役立ち情報

「老後の備え」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やはり「退職金」ではないでしょうか。しかし、厚生労働省の調査(就労条件総合調査)などを見ても、退職金制度を持つ企業は減少傾向にあり、現在は約7割〜8割程度にとどまっています。

転職活動や就職活動において、「退職金制度がある会社」と「ない会社」、どちらを選ぶべきなのか。この問いに正解はありませんが、**「あなたのキャリア観」と「資産形成のスキル」**によって、選ぶべき道は明確に分かれます。

今回は、それぞれのメリット・デメリットを整理し、2026年現在の最新状況を踏まえた賢い選び方を解説します。


1. 退職金制度がある会社の「安心感」と「落とし穴」

退職金制度がある会社の最大の魅力は、**「半自動的に老後資金が積み上がる」**ことです。

メリット:税制優遇と確実性

日本の税制において、退職金は「退職所得」として非常に優遇されています。大きな控除(退職所得控除)が適用されるため、月々の給与で同じ額をもらうよりも、手元に残る金額が多くなるケースがほとんどです。また、確定給付年金(DB)などを採用している企業であれば、運用リスクは会社が負ってくれるため、将来もらえる額が事前に把握しやすいという安心感があります。

デメリット:長期勤続が前提の「縛り」

一方で、多くの退職金制度は「長く働くほど有利」に設計されています。自己都合による早期退職では支給額が大幅に減額されることが一般的です。そのため、退職金に依存しすぎると、「今の仕事が合わないけれど、あと3年いないと退職金がもったいない」という**「キャリアのサンクコスト(埋没費用)」**に縛られるリスクがあります。


2. 退職金制度がない会社の「自由」と「実利」

退職金がない会社(主にベンチャー企業や外資系企業)は、その分を「今」の報酬に反映させているケースが多いのが特徴です。

メリット:高い流動性と今の手取り

退職金がない代わりに月給や賞与が高く設定されている場合、若いうちから自由に使えるお金が増えます。その資金を元手に早期に投資を始めたり、スキルアップの自己投資に回したりできるのは大きな強みです。また、いつ会社を辞めても「損をした」という感覚が薄いため、キャリアチェンジの柔軟性が保たれます。

デメリット:自己管理能力が問われる

最大のリスクは、**「入ってきた分だけ使ってしまう」**ことです。退職金がない会社で働き、貯金や投資もしていなければ、老後を公的年金だけで乗り切るという厳しい現実が待っています。また、万が一の倒産時に守られる「退職金」という名の資産がないことも考慮すべき点です。


3. 判断の分かれ目は「ポータビリティ」と「資産形成スキル」

現代において「退職金の有無」だけで会社を選ぶのはリスクがあります。注目すべきは、**企業型確定拠出年金(企業型DC)**などの導入有無です。

もし「退職金制度なし」と書かれていても、企業型DCを導入している会社であれば、それは実質的な退職金準備になります。この制度の利点は、**転職先に持ち運べる(ポータビリティ)**こと。会社に依存せず、自分の口座として資産を積み立てられるため、現代のジョブホップ(転職)を前提としたキャリア形成には非常に適しています。

選ぶ基準のチェックリスト

あなたがどちらを選ぶべきか、以下の指標で考えてみましょう。

  • 「ある会社」を選ぶべき人:

    • 一つの会社で10年、20年と腰を据えて働く意向がある。

    • 資産運用を自分でするのは面倒、または苦手。

    • 将来の受取額が確約されている安心感を優先したい。

  • 「ない会社」を選ぶべき人:

    • 3〜5年単位でキャリアアップ(転職)を繰り返したい。

    • NISAやiDeCoなどを活用し、自分で資産を増やす自信がある。

    • 将来の「不透明な約束」よりも、今現在の「キャッシュフロー」を重視する。


4. 2026年、私たちが取るべき戦略

2026年現在、退職金制度のルールも変化しています。例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)の改正により、退職金とiDeCoを併用する場合の受け取り時期の調整(10年ルールへの延長など)がより重要になっています。

もはや、「会社が老後を守ってくれる」という時代は終わりました。

結論として、どちらの会社を選ぶにせよ、大切なのは**「退職金の有無を、年収の一部として冷静に換算する」**ことです。退職金が2,000万円出る会社と、出ないけれど年収が100万円高い会社。30年働けば、どちらも額面上の総額は似たようなものになります。

「退職金がないから不安だ」と短絡的に考えるのではなく、**「ないなら自分でどう作るか」「あるなら、その縛り以上にこの会社にいたいか」**という主体的な視点を持つことが、後悔しない会社選びの秘訣です。